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天珠とは
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天珠イメージ



瑪瑙に特殊な薬液で模様を描き、それを高温で焼き付けたものである。


本来はチベットの僧侶が身につけるものであった。一つ一つのデザインに色々な種類のパワーを与えるという意味がある。
宗教用具であり、人の及ばぬ力を得るためのお守りでもある。僧侶以外の者が身に付けるときは僧侶が修行して会得した「徳」や「気」、「力」などを、修行をすることなしに得るとされている。
日本の古事記には、天照大神が素盞鳴尊と高天原で対決したとき、全身に体が見えなくなるほどの無数の勾玉を身に付けていったとの記述がある。何かを身に付け、それからパワーを得るというのは日本にも古くからある話である。
チベット・ネパールなどヒマラヤ文化圏にある人の間では天珠を家宝として伝える、嫁入り道具として娘に持たせる、寺院に寄進する、あるいは墓に埋葬するなどして大切にしている。


天珠に関する禅話および記述
天珠とはこの世の石ではなく、天から降ってきた生命のある霊虫だという言い伝えがある。霊力を持って災厄を逃れ、生命を守り、富、財、あらゆる幸運を招くと信じられている。
その他にも仏教の経文に由来する神話もある。

「遠い昔、ヒマラヤー帯には神出鬼没の悪神が住んでいて、一定の期間毎に災厄をもたらし疫病を流行らせていた。そこに人々を燐れんだヴァジュラ・プァラヒ(金剛字亥母)が、天上で修法を行い、法珠を降したのである。善果を積んだ人はこの珠を手に入れ、災厄を免れることができた。
より具体的にはチベットの医学書「匹部医典」により確認できる。8世紀頃に医聖ユトク・ニンマ・ユンテングンポによって書かれた伝説上の秘典で、インドの伝統医学アユルヴェーダの影響を受けて書かれたこの書物に天珠に関する記述がある。



天珠の製法
削りだした瑪瑙に黒い部分は硝酸銅溶液で、白い部分はアルカリ性溶液で模様を描く。
全体を白くする場合もあるし、黒くする場合もあるし、本来の瑪瑙の色を生かす場合もある。その後に1300度の高温の炉で熱して、薬液が瑪瑙を腐蝕するのを促進する。こういった高温の中では瑪瑙の構造が不安定になるので、加熱と冷却の過程で一定の圧力を加えておかないと瑪瑙自体が裂けてしまう。古代のチベットでは天然の薬草の液体や灰で模様を描いていたらしい。
しかし圧力の技術は非常に難しく、18世紀の産業革命以降に研究が始まったばかりである。
それがなぜ、判っているだけでも8世紀に作ることができたのかは謎である。


天珠のグレード
天珠には何段階かのグレードがある。

ハイグレードなのは古墳から出土する骨董品で、1ピース数十万から数百万円以上だがほとんど流通していない。たとえて言うならば、日本の高松塚古墳から出土した勾玉が一般人の手に入らないのと同じである。
次にグレードが高いのは高温高圧の炉で20日間熱処理をしているものである。天珠の中心まで薬液が浸透している。ただ石の結晶の方向により焼いてみなければどこまで薬液が浸透するか判らない上、割れる確率も高くなってくるので非常にロスが多い。価格は1ピース数万円程度。
次は一般的なレプリカで薬液の浸透は比較的浅い。炉の温度がやや低く、焼入れの時間も15日間と短い。そのためロスが少なく安定して生産することができる。


天珠の模様
仏典に「五養の悪眼が四周をめぐらす」とあるに、古代の人々は悪眼が災厄を招きよせ、邪念を呼び起し、嫉妬や怒りといった負の感情を湧き立たせると信じていた。
悪眼に善眼で対抗するため、チベットの人は様々な眼の装飾文様を生み出し、家の中、寺院や棺桶に、また御守や装飾の珠にも模様を描いて身につけた。日の模様にしろ、何かの形を模様化したものにしろ、仏教哲学により意味づけられている。


天珠の時代考察
天珠はいつからチベットにあるのかは確実なことを調べることはできないが、少なくとも7世紀頃まで遡ることができる。当時チベットはギサ王が統治していた。ギサ王の軍は強く、遠くペルシャまで遠征して大勝したこともあった。そしてペルシャのアルダシール王の宮殿に侵入し、多くの珍しい宝物を発見したのだが、そのなかに天珠の原型になる、項瑠に腐蝕加工を施して模様を描いた宝玉があった。もともとそういった加工技術は4500年前からメソポタミア文明にはあった。この玉を戦利品としてチベットに持帰り、軍に褒美として与えた。併せてギサ王はペルシャの珠細工職人も捕虜として連れ帰り、ヒマラヤ地域で掘出される原料にチベット特有の宗教的図案を加工して天珠を作ったらしい。

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